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契約違反の同居人を追い出せる?

村上です。

以前、大手のS不動産が、
仮想空間の「メタバース」で、
新築分譲マンションの販売を
始めるというニュースがありました。

ネット経由で、仮想空間に開設した
マンションギャラリーを内覧し、
オンラインで契約につなげるというもの。

こういったメタバースやVRによる、
不動産取引のテック化は、
生まれては消え、消えては生まれを
繰り返している印象ですが、
少なくとも、これまでのケースでは、

上手く行ったものは1つもない

というのが、実情だと思います。

そもそも、果たして顧客の何人が、
VRのヘッドッセットを持っているのか?

メタバース上でアバターを操作出来る
顧客が、どれだけ存在するのか?

さらにそこから、
仮想のマンションギャラリー経由で、
何件の契約が取れるのか?

個人的には疑問しかないですよ。

渋谷区公認で2020年にオープンし、
大掛かりなプラットフォームとして、
話題になった、

メタバースの「バーチャル渋谷」

でさえ、収益化出来てないそうですし、
メタバースの開発元である
旧Facebook社のMetaでさえ、
あまりの盛り上がりの無さに、
今後の動向が危ぶまれていると聞きます。

その現状を考えた場合、
何千万円、何億円もの契約を結ぶ不動産取引に、
メタバースを導入するのは、
どうも先走りの感が否めません。

もちろん、新しい取り組みに対し、
頭から批判する気はありませんし、
使えるVRが出現することがあれば、
それは大いに歓迎すべきことです。

しかし、不動産の取引は、

・実際の物件をその目で見て
・人と人が対面して交渉し
・お互いの合意点を模索する

という、非常にアナログかつ
心理的な駆け引きが必要なもの。

その重要な部分を、
VRが果たして担えるのか?
収益化が達成出来るのか?

やはり私には、疑問だらけなのです。

契約違反の同居人を追い出せる?

さて、本題です。

当社の会員さんから、
以下のご質問をいただきました。

******

現在所有しているアパートが、
単身者向けであることから、
二人以上の入居を禁止しています。

ところが、ある1室に関して、
入居者さんの騒音クレームから、
同居人のいることが判明しました。

契約違反になると思うのですが、
穏便に退去してもらうなど、
解決する方法はあるでしょうか?

******

この件に関しては、
残念ながらノーとしか言えません。

借地借家法において、
入居者である賃借人の権利は、
非常に強力なものがあり、
賃借人の合意がない限り、
立ち退きを強制出来る術は、
殆どないというのが実情です。

今回は、
そのような賃貸契約違反に伴う、
立ち退きの是非について、
解説してみたいと思います。

「正当の事由」がないとダメ?

まず始めに、
借地借家法における立ち退きについて、
簡単に触れてみたいと思います。

借地借家法28条1項、
「建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件」
によれば、

*****

建物の賃貸人による第26条第1項の通知
又は建物の賃貸借の解約の申入れは(中略)
正当の事由があると認められる場合でなければ、
することができない。

*****

とされています。

ここで言う「正当の事由」とは、

・老朽化による取り壊し
・建物の新たな建て替え
・長期間の家賃滞納
・重大な契約違反行為

などが該当しますが、
入居者が退去を拒んだ場合は、

裁判に掛けて勝訴を得る

必要があるんですね。

結局、裁判で勝たない限り、
入居者の同意を得ないまま
強制的に立ち退かせることは、
ほぼ無理だと言えるのです。

苦労の割に合わない争い

さらに、裁判の場においても、
立ち退きの正当性が認められるかは、
はっきりいって分かりません。

例えば、入居者が同居人のことを、

「いや、友達が遊びに来ただけ」

などと抗弁するようであれば、
私たちオーナー側は、

同居している人間がいるという、
証拠を提出しなければならない

のです。

入居者のプライバシーに配慮しつつ、
同居人の存在を証拠として得るには、
相応の労力が必要となりますし、
もちろん、運にも左右されます。

相手も警戒しますから、
そうそうシッポは出しませんよ。

また、運良く証拠が集まって、
無事勝訴を勝ち得たところで、

相当な期間と費用が掛かる

ことは、避けようがありません。

仮に勝訴したとしても、
得られた損害賠償額が数万円レベル
なんてケースもありますから、
リスクとリターンを天秤に掛けると、
割に合わない戦いとなることは、
間違いないと思います。

押してダメなら引いてみる?

つまり、契約違反だからといって、
同意しない入居者に立ち退きを迫ることは、
相当にハードルが高いということ。

であれば、次善の策として

・物件内に張り紙をする
・口頭で注意し経過を見守る

ぐらいの、
ソフトな戦術を取ったほうが、
結果的に上手く行くことが多いです。

約束を守らない側が得をして、
損を被る側が下手に出なければならない

なんて、随分と理不尽な話ですが、
借地借家法という法律自体が、

立場の弱い賃借人を保護する

という、弱者救済的な
ポジションを取っている以上、
われわれオーナーが取れる手段は、
限定的だと言わざるを得ません。

モアベターな解決を目指せ!

そもそも、私は個人的に

・借地借家法
・労働基準法
・消費者保護法

この3つの法律は、経営者にとって

客にゴネられたら
泣き寝入りするしかない

悪法だと考えています。

結んだ契約を反故に出来るなど、
あまりにも客の権利が強過ぎて、
このままでは、

世界の自由な経済活動から
日本がとり残されてしまうのでは?

という危機感を持つぐらい、
ガラパゴス的な法律だと思います。

ただ、そんなことを嘆いていても、
目の前にあるトラブルは、
消えて無くなるわけじゃありません。

法に従い、粛々と行動するしか、
解決策はないのですから。

ベストは無理だが、
モアベターな解決を目指す!

ぐらいのマインドで、
日々の物件運営に臨みたいものです。

がんばりましょう!

村上

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